連載
2023年11月28日

2人に1人が感じる冷え。その原因と対策は?

  • 冷えとは
    ■4種類の冷えのタイプ
    ■冷え「性」と冷え「症」
  • 統計からみた冷えの実情
    ■冷えを感じるのは圧倒的に女性が多い
    ■冷えを感じやすい部位は足先・手先
    ■冷えによって悪化する症状はほとんどが男女共通
    ■正しい冷え対策をしていますか?
  • 冷え対策
    ■今日から始められる冷え対策
    ■漢方から考える冷え症
1. 冷えとは
秋から冬にかけて気温が下がっていくのに伴い、特に体温が低いわけでもないのに足先や手先など、身体の芯から冷たくなる方も多いのではないでしょうか。また季節に関係なく、このような症状を感じる方もいると思います。それは「冷え」が影響していると言えるでしょう。

■4種類の冷えのタイプ
「冷え」は、ストレス・喫煙・筋肉量低下や食生活の乱れなどによる血行不良や体内の熱量不足で起こり、不快な感覚を起こします。冷えは、大きく以下の4タイプに分けられます。

全身型:身体全体が冷えるタイプ。基礎代謝が低い方に多く、体温が低いため季節に関係なく冷えを感じやすい傾向があります。
四肢末端型:主に手や足の先が冷えるタイプ。末梢の血流やリンパの流れが悪いことが原因です。むくんだ手足が冷えを増長します。頭痛や肩こりなどが生じることもあります。
下半身型:腰から下に冷えを感じるタイプ。座ったままの姿勢を長時間続けることや、下半身の筋肉不足・血液のうっ滞により起こります。上半身には影響がないため、顔がほてりやすいのが特徴です。
内臓型:身体の内部だけ冷えるタイプ。自覚症状がほとんどありませんが、胃腸などの内臓の動きが悪くなったり、お腹が張る感じや発汗などが見られたりすることがあります。

このほかにも、手足の先と下半身の両方が冷える混合型などもあります。
自分がどのタイプに属しているか知っておくと、対処法などを考えるのに役に立つでしょう。タイプ別の対処法については、後半で説明します。

■冷え「性」と冷え「症」
「冷え」を感じやすい人は「冷え”性”」とよく言われますが、病院での検査で異常が認められない場合、西洋医学では治療の対象になりにくいのが現実です。実際に欧米では、日常生活の中で「冷え性」という概念がなかったりもします。
一方、「冷え”症”」は東洋医学的な考え方で、身体の機能や働きの問題が原因で起こり、症状の1つとして扱われます。そのため「冷え症」は治療の対象になります。

2. 統計からみた冷えの実情
では実際に、冷えはどのような方がどの部位に感じ、冷えによってどんな体の不調が出てくるのでしょうか。
以下に、冷えに関するアンケート結果をまとめたものをご紹介します。

■冷えを感じるのは圧倒的に女性が多い
冷えは女性がなるものとよく言われていますが、実際はどうでしょうか。

全体的には、約2人に1人が何らかの冷えを感じていることがわかりました。女性は3人に2人ほど冷えを感じていましたが、男性でも3人に1人は冷えを感じています。
男性と比較して女性で冷えを感じる方が多いのには、以下のような理由が挙げられます。

筋肉量:女性は全体的に筋肉量が少ないため、体内でつくり出す熱量が少なく、なおかつ血液を全身に巡らせるポンプの力が弱い傾向があります。
脂肪量:脂肪は一度冷えると温まりにくいという性質があります。脂肪内には血管が少なく、内側から温めることが難しいことも理由のひとつです。
月経、ホルモンバランス:月経時は血液量が減ることに加え、ホルモンバランスの変化が自律神経にも影響を与え、血流が悪くなったり冷えやすくなったりします。

さらに、女性の骨盤内には子宮や卵巣という臓器があり血流が滞りやすいといった原因も挙げられます。
スカートやストッキング・ハイヒールなども体内の血の流れに影響し、冷えが起こりやすいと言われています。

■冷えを感じやすい部位は足先・手先
続いて、「冷え症」であるなしに関わらず、身体のどこの部分に冷えを感じやすいか、また男女ではどのような違いがあるのかについて調べました。

圧倒的に冷えを感じやすい部位は男性も女性も足先および手先と、四肢末端型の冷えが圧倒的でした。続いて多かったのは、お腹や腰、お尻といった下半身型の症状でしたが、特に骨盤周りの体の部位の冷えは女性の方が訴える割合が多く見られました。

■冷えによって悪化する症状はほとんどが男女共通
冷えに伴い悪化する症状があるのは「冷え症」のサインです。男女共に冷えによって悪化する症状には共通性があり、肩こり、不眠、頻尿、頭痛・頭重などが挙げられます。女性は肩こりがいちばん多く、男性は頻尿がいちばん多い結果となりました。
また冷えを感じる女性のうち、4分の1の方に生理痛の悪化が挙げられます。

■正しい冷え対策をしていますか?
では実際に、冷えに困っている方はどのように乗り切っているのでしょうか。アンケートの結果、次のような対策をしていることがわかりました。

冷え症に対する対策としては、重ね着や入浴、身体を温める食材を摂る、冷え対策グッズの活用と続き、外側から身体を温める方が多いという結果でした。

しかし、例えば熱量が減っている人が厚着をしても、そもそも体の中で作っている熱が少ないので、なかなか温まりません。冷えのタイプに合った対処法を試みるのが大切です。


調査概要

調査手法:インターネットリサーチ(QIQUMO)
実施時期:2023年10月6日
調査対象:20代~50代の男女797名
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング

3. 冷え対策
冷え体質をそのままにしておくと、日常生活がつらいだけではなく、冷えによる症状の悪化や何かしらの病気を引き起こす原因にもなりかねません。
最後に、少しでも快適な生活を送れるようにするための対策をご紹介します。

■今日から始められる冷え対策
普段の生活を少し見直すことで、冷え知らずの体質に近づくことができるかもしれません。
以下に冷えに共通した対処法と、冷えの4つの型別のポイントを挙げてみました。生活の中にうまく取り入れてみましょう。

【食事】
冷たい飲み物・食べ物を控え、飲み物はなるべく常温や氷抜きのものを選びましょう。
冷たいものを飲んだり食べたりした場合は次の食事で身体を温める食材を摂り入れるなど、一日単位でバランスを取るよう心がけましょう。
バランスの取れた食事を心がけることが大切ですが、身体を温める食材を積極的に摂り入れましょう。主に次のような食材がおすすめです。
根菜(大根、かぼちゃ、ニンジンなど)、イモ類(サツマイモなど)、卵、発酵食品(味噌、チーズ)や、ショウガ、ネギなど

【運動】
無理のない範囲で、ウォーキングや軽めの有酸素運動を心がけましょう。また、汗をかいたら冷やさないようにすぐに拭きます。
極端なウェイトトレーンングや体脂肪率のコントロールは避けましょう。
インナーマッスルを鍛えるのは冷えには効果的です。

太ももの裏にある大きな筋肉だけでなく、下半身の広範囲の筋肉も鍛えることで、筋肉量や血流を促すポンプ機能のアップが期待できるため、身体全体も温まるでしょう。

【服装】
3つの首(=手首・足首・首元)を冷やさないことが大切です。体の中心から熱を運ぶ動脈が表面に近づいている部分です。
靴下、レッグウォーマ、スカーフなどを上手に活用しましょう
胃腸には実はたくさんの血管が張り巡らされています。そのため、お腹を温めることで全身が温まる効果が得られます。冷やさないことも大切です。
おすすめアイテムは腹巻きです。最近では、薄手の素材でアウターにひびきにくいものや、ショーツと一体になっているタイプなど種類も豊富です。

【入浴】
入浴はシャワーだけで済ませず、湯船に浸かるよう心がけましょう。
基本の入浴は「ぬるま湯&ゆったり」です。
38~40℃のぬるめのお湯に10分以上、できれば30分程度浸かりましょう。
湯冷めには気をつけなければなりません。湯冷めの原因は、体が温まって末梢血管が開ききった状態で寒いところに出てしまうことにあります。
お風呂から出てすぐに手首足首を冷やさないような格好に着替えるか、風呂場から出る前に手足や顔をぬるめの水で一度流すと、末梢の血管が適度に引き締まって熱が逃げにくくなります。自律神経も整えることができます。

【冷えのタイプ別】
全身型:栄養の低下・筋力不足などが原因のことが多いため、食事の工夫や簡単な運動から取り入れてみましょう。
四肢末端型:血流不足が考えられますが、貧血やむくみなども冷えの原因となります。特に女性は鉄分の摂取や筋力不足に注意が必要です。
下半身型:同じ姿勢やデスクワークが長い方は要注意です。体のストレッチや全身運動をこまめに取り入れましょう。
内蔵型:冷たい食事は避け、運動が大切です。お腹や骨盤周りを内側・外側から温めることを意識しましょう。

■漢方から考える冷え症
西洋医学では、冷えそのものは治療の対象ではないことは説明しました。しかし漢方医学では、身体が持っている本来の働きを改善することで、さまざまな症状に対処できると考えます。そのため、漢方薬の服用により身体の内側から冷え性体質を変えられる可能性があります。

漢方における冷えは、エネルギー不足(気虚)や血流の悪さ(瘀血)、体内の水分の偏り(水毒)といった、複数の原因によって身体の熱をつくる機能が低下することで起こるとされています。そのため、治療にはこれらのバランスを整える効果があるとされる漢方薬が使用されます。

ただし漢方は服用する方の体質、症状、冷えのタイプなどによって処方が異なります。市販の漢方薬も対策としては有効ですので、ドラッグストアや薬店の薬剤師や登録販売者に相談して自分に合った漢方薬を見つけましょう。

冷えにおすすめの漢方薬
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=lady&trouble=001

【監修医師プロフィール】

御苑アンジェリカクリニック
院長 神藤 慧玲(しんとう えり)
http://gyoen-angelica.com/

■経歴
千葉大学医学部卒業
千葉県内・東京都内大学病院・東京都内総合病院
慶愛クリニック・慶愛大木クリニック
北里研究所東洋医学研究所研修を経て
御苑アンジェリカクリニックを開院
東京慈恵会医科大学にて痛みの脳画像研究を行っている

■専門・資格
日本麻酔科学会 専門医
日本東洋医学会 会員
日本ペインクリニック学会 会員
日本抗加齢医学会(アンチエイジング学会) 専門医

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