撮影:藤田由香

2024.04.08

わたしと漢方

規則正しい生活を心掛けながら小さい目標でも日々の生活の中でクリアしていくことを楽しむ

大菅小百合(おおすがさゆり)元スピードスケート日本代表

女子スピードスケートの日本代表として2002年にソルトレイクシティ、2006年にトリノと2度の冬季オリンピック出場を果たし、さらに自転車競技でも2004年のアテネオリンピックに出場した大菅小百合さん。アスリートにとって最大の夢の舞台であるオリンピックに2種競技で3季連続出場という驚異的な記録を残した大菅さんは、「自己管理が徹底できていたからこそ長い間、競技生活を続けられたのだと思います」と話します。2011年に現役を引退したのち、2014年にスプリントコーチの秋本真吾さんと結婚し、一児の母となった今、子育てや仕事に忙しい毎日を送っています。大菅小百合さんに、現役時代の体調管理や日々大切にしていることについてお話を伺いました。

規則正しい生活を送ることが大切

競技選手としての現役時代は、食事と睡眠をしっかり取るようにして、練習後には必ず湯船に浸かるという、規則正しい生活を送ることを常に意識していました。食事は基本、白米と味噌汁を中心にした一汁三菜で、1日3食しっかり摂っていました。選手によっては制限や減量がありますが、私の場合は筋量を増やして体脂肪を減らしていくトレーニングをしていたので、サプリやプロテインにも頼りながらバランスよく食べることを心掛けていました。社会人になってからは、最初に栄養士さんに大まかなアドバイスをもらい、あとは自分なりに考えながら自炊していました。

現役選手にとって食事はとても重要ですが、心が良い状態で試合に望むことの方が私は大切だと思います。もちろん、試合前に摂らない方がいいものは避けるようにしていましたが、食べたいものを我慢してモヤモヤするより、食べてもその分、しっかり身体を動かす方がメンタルにはプラスだったんですよね。私自身、我慢することやストレスを溜めることが一番の苦手だったので、「食べたいものがあれば食べよう」にしていました。食べてしまったことで落ち込むより、好きなものを食べて次もがんばろうと気持ちを切り替えることが大事でした。

もともとお風呂も入浴剤の香りも好きなので、練習後は必ず湯船に浸り、疲れを残さないようにしていました。マッサージを受けることもありましたが、セルフケアという意味では湯船に浸かることは手軽な疲労解消法です。毎日の入浴のおかげで現役時代は風邪をひくこともなく、体調にも大きな波がないまま過ごすことができました。今も寝る前には湯船で全身を温めて、その温まった身体のまま全身のストレッチをすることを日課にしています。

食事やセルフケアを含め、やはり自己管理は大事だと思います。現役時代、次の日が休みの時は、遅くまでドラマを見たりして夜更かしすることもありましたが、夜遊びに出かけることはなく、自己管理を徹底していたと思います。だからこそ長い間、競技生活を続けられたのではないかと。自己管理ができなければ環境の異なる様々な国で規則正しい生活を維持しつつ、試合で成果を発揮することはできませんし、まず遠征に回っていけませんよね。生活全般において規則正しい行動を心掛けることで、どんな環境でも戦っていける能力を自分なりに養えたのだと感じます。

失敗を乗り越えたことで3度目のオリンピックに

初めて出場した2002年のソルトレイクシティ冬季オリンピックのスタートで大失敗した経験があり、その時に競技人生で初めて辞めたいと思いました。最初は時間が解決してくれると考えていましたが、それでも辛さは癒えず。でも、もうちょっとだけ頑張ってみようかなと思い始めた時、失敗をどう克服していくかを考えられるようになり、初めて失敗に向き合うことができました。失敗した原因は緊張からくるものだと自分なりに見つけることもできて、そこで失敗した場所に立ち戻ってトレーニングを積み、メンタルも鍛えていきました。

当時は、どん底に落ちましたし、二度と失敗したくないので競技はもうやりたくないという気持ちでした。誰でも一度失敗すると、もう挑戦しないでおこうという選択を選びがちですが、乗り越え方を知ったことが自信になり、失敗してもいいからやってみようという気持ちになることがあります。私もオリンピックで失敗した時はそうは思えませんでしたが、今思えばあの失敗も無駄ではなかったと思えます。その失敗を乗り越えられたことで自転車競技にも繋がり、アテネオリンピックにも出場することができました。日常でも些細な失敗は多々ありますよね? その乗り越え方も今は自分でわかるので、あまり落ち込むことがありません。だから、どんどんチャレンジしていいと思いますし、失敗もしていいと思っています。それは娘にも伝えています。

娘のためにアスリートフードマイスターに

引退してからは、生まれてくる子どもが将来アスリートになった時に、食事の面でもサポートしたいという思いから、バドミントン選手として活躍した潮田玲子さんと一緒にアスリートフードマイスターの資格を取得しました。今、娘は小学校一年生で、まだまだアスリートとは言えないので、食べたいものを食べさせていますが、本格的に競技に出場するようになったら資格を活かして食事の面でも支えたいと思っています。

娘はテニスとランニングを習っています。主人が陸上選手だったので、走りを指導する仕事をしていて、主人のランニングクラブに娘も通っています。走るのは早いです。本人がやりたくないことはやらなくていいと思っていますが、まだ小学生なので、いろいろなことをやっていい時期ですし、どんな競技があるか知らないことも多いです。私と同じスピードスケートじゃなくてもいいし、主人と同じ陸上じゃなくてもいい、興味を持ったものはなんでもやらせています。なにで開花していくのか、親として楽しみです。

私は引退した直後、なにもしたくなかったので、運動も一切しませんでした。好きな時に食べて、夜更かしもしてお酒も飲み、自由な生活を送っていました。ただ、ある程度時間が経つとこうした生活に物足りなさを感じて、目標が欲しくなるんですよね。「オリンピックに出る」といったことと同じくらい大きな目標を日常生活の中で見つけるのは難しく、悩んだこともありましたが、まずは小さい目標をひとつずつ立てていくようにしました。小さい目標でも日々の生活の中でクリアできれば楽しくなってきて。目標を探していく中でやっぱり身体を動かしたくなり、どうせなら新しい競技をやりたいと思い、テニスにたどり着きました。オリンピックの出場経験があることは隠して練習に通っているのですが、やり出すとどうしても本気になってしまい、必死に球を追いかけてしまいます。でも、それくらい集中して真剣に取り組むとどんな競技でも楽しく感じますよね。球をひとりでひたすら拾い続けていると、コーチから「諦めないで、すごい!」と言ってもらえますし、「何かスポーツをしていたんですか」とたまに聞かれることもあったり(笑)、私はやっぱり身体を動かすことが好きなんだと改めて感じました。

失敗をおそれずこれからもチャレンジ

引退してから10年以上が経ち、今は娘と一緒にテニスやランニングを楽しんだり、休日には公園で遊んだりしています。現役時代は風邪をひくことも大きな怪我をすることもありませんでしたが、今は子どもから風邪をもらってしまうことがあるので、体調管理には引き続き気をつけています。ママ友でも飲んでいる人が多い漢方は気になっていますね。基本的に、現役時代と同じように規則正しい生活を心掛けて夜更かしもあまりしません。明日のテニスのために早く寝ようというマインドです。結局、日中に体をたくさん動かしていると、遅くまで起きていようという気持ちにならないんですよね。体を動かして、汗をかいてストレスを発散できているので、身体が疲れたと感じるくらいが自分にとって気持ちいいのだと思います。これからも身体が動く限りは、失敗をおそれずいろいろなことにチャレンジしていきたいと思います。

大菅小百合/おおすがさゆり

北海道標津郡標津町出身。1980年10月27日生まれ。女子スピードスケートの日本代表として2002年にソルトレイクシティ、2006年にトリノと2度の冬季オリンピック出場を果たす。さらに、自転車競技でも日本代表として2004年のアテネオリンピックに出場。2011年6月に現役引退。企業チームで後進の指導にあたったのち、現在は全国で講演会やイベント、テレビ番組等に出演。スプリントコーチの秋本真吾と結婚し、一児の母。
公式インスタグラム:@sayuriosuga1027

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