2024.03.06

漢方ブログ

【医師監修】PMS(月経前症候群)の症状やセルフケアのご紹介

PMS(月経前症候群)とは

PMS(月経前症候群)とは、20~30代の女性に多く見られる不調の総称で、生理が始まる3~10日前あたりから起こり始めるのが特徴です。
身体的や精神的な症状だけでなく、自律神経に関係するものまで、さまざまな症状が現れますが、生理が始まるとウソのように軽減したり消失したりします。
ただし、日常生活に支障をきたすほどの精神症状がある場合は、PMDD(月経前不快気分障害)も疑われます。

PMSの原因と定義

PMS(月経前症候群)の原因はまだはっきりわかっていませんが、妊娠や体温・食欲などに影響を与える女性ホルモンの一種「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が分泌される周期と症状出現のタイミングがほぼ同じであることから、女性ホルモンとの関係性が考えられています。
このほか、食生活の乱れや飲酒・喫煙、睡眠不足などの生活習慣、ストレスなどもPMSの発症に関係していると言われています。

しかしPMSは診断が難しく、症状だけでは判断できないため、一般的には詳細な問診を手掛かりとしています。

目安として、生理の5日前あたりに以下のような症状が現れ、なおかつ生理開始後4日以内に消失するかどうかチェックしてみましょう。

特に、生活に支障をきたすほどの症状や、3ヵ月以上にわたって生理前にこれらの不快な症状が現れている場合は、PMSを疑った方がいいかもしれません。

なお、PMSと混同しやすい疾患に月経困難症があります。
症状が現れるタイミングに大きな違いがあり、生理中に腹痛や腰痛などの症状が多くみられると言われています。
また原因についても、子宮の過度な収縮や痛みを引き起こす物質の増加のほか、子宮腺筋症や子宮内膜症、子宮筋腫などの病気で起こることもあります。

我慢できない痛みが続くなど症状がつらい時には、専門家へ相談することも大切です。

生理前の不調について

ここからは、20代~40代の女性を対象に実施した調査結果と照らし合わせながら、生理前の不調について、さらに細かく掘り下げていきます。

まずは、生理前に不調を感じるかについて伺ってみました。
何かしらの不調を生理前に感じている・感じたことがある方は7割近くもおり、多くの女性に起こり得ることがわかります。

では、具体的にどのような症状を感じている方が多いのでしょうか。
生理前に不調を感じると回答した600名の方に伺ってみました。

その結果、半数以上の方が「イライラする」という項目を選択しました。
さらに、「疲れやすい、だるい」「気分が不安定になる(情緒不安定)」と続いており、この調査結果からは、身体的よりも精神的な症状が現れる女性が多いことがわかりました。

ちなみに、PMSの主な症状として、頭痛や腹痛、むくみ、乳房の張りといった身体的なもの、イライラ、不安、集中力低下、睡眠障害などの精神的なもの、そして食欲不振・過食、倦怠感などの自律神経に関係する症状などが挙げられます。

これらの症状の多くは女性ホルモンの乱れによっても生じることがあります。
今回の調査はPMSと診断された方が対象ではないものの、症状が出現した時期を併せて考慮すると、PMSを含む生理前の不調と女性ホルモンには、やはり何かしらの関係性があると言えるかもしれません。

生理前の不調に対するセルフケア

症状への対処法の実情

次に、生理前に何らかの不調が現れた際に、どのように対処しているのかについて伺ってみました。

回答にばらつきはありますが、「病院で薬を処方してもらっている」方はわずか8%未満であり、それ以外は、安静にしている、気分転換やリラックスする時間を増やす、市販の薬やサプリメントを飲んでいるなどセルフケアをしている方が多い傾向にありました。
しかし、症状があるのにも関わらず、対処法がわからないため我慢していると回答された方も約4人に1人いることがわかりました。

生理が始まれば症状が軽減・解消するのに加え、我慢するのが習慣化しているなどの理由が、この結果に反映されているのではないかと推測されます。

症状別セルフケアのご紹介

ここでは、先ほどの調査結果の中から特に多かった症状を中心に、セルフケアの方法をご紹介します。

漢方から考えるPMSの症状と食養生

漢方では、健康な身体は、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素のバランスが取れている状態であり、生理前などに何らかの理由でこれらのバランスが崩れることで、さまざまな症状が現れると考えます。
例えば、「気」が正常でない場合はイライラや無気力、気分の落ち込みなどが起こるほか、「血」が滞っている状態では腹痛や頭痛、肩こりなどが、また「水」がきちんと身体をめぐっていないと、むくみやめまい、吐き気などの症状につながるとされています。

特にどのバランスが崩れているか、ご自身の症状からチェックしてみてください。

「お血」・・・「血」のめぐりが悪い
「血虚」・・・「血」が不足する
「水毒」・・・「水」のめぐりが悪い
「気滞」・・・「気」のめぐりが悪い
「気虚」・・・「気」が不足する
「気逆」・・・「気」が逆流する

西洋医学と異なり、漢方はこれら3つのバランスを整えることでPMSの諸症状にアプローチするため、複数の症状に対する改善効果が期待できます。

このほか、漢方には食事によって治癒力を高める「食養生」という考え方もあります。

・気のめぐりをよくする食べ物:セロリ、春菊、パセリ、たまねぎ、ミカン、レモンなど
・血のめぐりをよくする食べ物:海藻、納豆、にんにく、しょうが、なす、イワシなど
・水のめぐりをよくする食べ物:小豆、大豆、ハト麦、きゅうり、ワカメなど

自身の症状に合ったセルフケアを試してみると共に、症状がつらい時には身体のバランスを整え、諸症状の改善が期待できる漢方薬も上手に取り入れてみてください。

自身に合った漢方薬がわからない場合には、医師やドラッグストアの薬剤師、登録販売者に相談してみましょう。

【調査概要】
調査手法:インターネットリサーチ(QiQUMOを利用)
実施時期:2024年1月30日-31日
調査対象:スクリーニング調査/20代~40代の女性 本調査/生理前に不調を感じる方
有効回答数:スクリーニング調査6, 000名 本調査600名
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング
調査主体:株式会社ツムラ

藤東クリニック 院長 藤東 淳也/ https://fujito.clinic/


  • ■経歴
    1993年4月 東京医科大学病院 産科婦人科学教室 研修医
    1994年5月 中野総合病院 産婦人科 医員
    1995年6月 戸田中央産院 産婦人科 医員
    1995年11月 東京医科大学 産科婦人科学教室 研究員
    1997年4月 東京医科大学産科婦人科学教室 助手
    1999年3月 東京医科大学麻酔科学教室
    1999年7月 東京医科大学八王子医療センタ- 産科婦人科医長
    2002年4月 東京医科大学産科婦人科学教室 助手
    2002年5月 米国カンザス大学医学部 細胞生物学教室へ留学
    2004年4月 東京医科大学産科婦人科学教室 講師
    2004年11月 東京医科大学病院産科婦人科学教室 医局長
    2008年6月 県立広島病院 婦人科部長
    2010年6月 産科・婦人科 藤東クリニック 院長
    2015年11月 医療法人双藤会 理事長

  • 専門・資格
    日本産科婦人科学会専門医
    医学博士
    細胞診専門医
    バイオインフォマティクス認定技術者
    日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
    日本内視鏡外科学会技術認定医
    婦人科腫瘍専門医
    母体保護法指定医
    新生児蘇生講習会専門コース修了

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