STORIES "KAMPO with Me"

わたしと漢方

イイノナホ ガラス作家

女性は季節や月の周期といった地球の動きにすごく敏感ですから他の生き物や植物のエネルギーをもらって体を整えるというのはすごく理にかなっていると思っています

撮影:藤田由香

東京・千駄ヶ谷にギャラリーとショップを構えるイイノナホさんは、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業した後、米国に移りシアトルでカーティス・ブロック氏に師事し、ガラス作家としてのキャリアをスタートしました。1997年に下北沢で個展を開いて以来、ニューヨークやパリなど国内外で活躍しています。2021年に高知県の酒蔵の酔鯨酒造とのコラボレーションで「酔鯨」の最高級酒「純米大吟醸 DAITO 2021」のボトルをデザインし、さらには人気アニメ『ドラえもん』の60歳の記念としてペーパーウエイト「ドラえもんに四つ葉のクローバー」を制作するなど、活躍の場をさらに広げています。イイノナホさんは、「女性は季節や月の周期といった地球の動きにすごく敏感で、同調して生きている生き物ですよね。他の生き物や植物のエネルギーをもらって体を整えるというのはすごく理にかなっていると思っています」と、語ります。今回、イイノナホさんに、日々大切にしていることや健康や育児などについて話をうかがいました。

家ではハーブや野菜を育てて心を豊かに

 健康のためには適度な運動が一番だと思っています。朝にヨガをしたり、週に2回くらいはウォーキングをしています。夏になると、ガラスの吹き作業が終わってから近所のプールに行ったりします。すごくアクティブなんです(笑)。でも、スケジュールをあまりきっちり決めないようにしています。決めてしまうとできなかった時のストレスがあったり、やらなくてはいけないプレッシャーから逆にやらなくなったりするので。あとは、たまに朝から一日寛いだり、家に誰も来ない日を作ったりして、のんびりしたい日を作るようにしています。

 毎朝、たいてい6、7時に起きて、9時半ごろから仕事を始めます。朝はごはんを作ったり掃除をしたりしますが、メールをチェックしたり割と仕事モードですね。最近は朝食を食べないことが多いですね。子どもたちがまだ小さい頃は、朝食だけでなくお弁当もしっかり作っていましたが、今は大学生ですし、女子ばかりでみんな「ダイエッター」なので(笑)。私も朝はあんまり食べない方が、調子がいいですね。

 食事はなるべく良質なものを摂るようにしています。例えば、添加物が少ないものや、生産地がわかる野菜を多めにいただくように心がけています。家でもハーブ類や薬味になるような野菜を育てていて、気分的にも良いですし、心も豊かになれますよね。サンチュは初心者向けなので簡単に育ちますし、意外と長く楽しめておすすめです。あとはピーマンもおすすめです。わさわさと実がなるのでぜひ育ててみてください。土からいただくものは食べてみてすぐ体にいいと分かりますよね。漢方も自然の恵みからできた薬ですから体にいいものだなと感じています。

すべてが自分の時間ですべてが自分のやりたいこと

 仕事とプライベートのバランスはあまり意識していないですね。以前は仕事と家庭を分けることや、仕事と子育てのバランスを取ることを気にしなくてはいけないのかなと思っていたのですが、そうするとどちらかが足りなかったり、あるいは偏ったりしますよね。ある時、仕事もプライベートもすべてが自分の時間ですべてが自分のやりたいことだと気付いてからは、気にしていないです。今やっていることはすべて自分が選んでいることだと思えてからは、ストレスがなくなりました。

 アトリエでは、ガラスの加工や吹き作業をしています。残業はあまりなく、だいたい19時には仕事を終えるようにしています。なぜかと言うと、ガラス作業は本当に体力勝負で疲れる仕事ですし、音も出てしまうので、遅くても20時までには終えるようにしています。夏場のアトリエは60度ほどの温室状態になり、本当に体力が消耗しますね。若いころはレゲエやハワイアンの音楽をかけて、「ここはリゾートなんだ」と自己暗示をかけたりしていました(笑)。仕事が終わってからは、たまに友人と食事に行くこともありますが、夜は本を読んだり映画を観たりして過ごすことが多いですね。あとは猫と遊んだり。それに子どもたちの話を聞いていると時間があっという間に過ぎていきます。

他の生き物や植物のエネルギーをもらって体を整える

 体調を崩すことはあまりありません。基本的には健康な方だと思います。ただ、自分では健康だと思っていても頑張りすぎて体の方が悲鳴をあげてしまったことがありました。自分では気付かなかったのですが、甲状腺がすごく腫れてしまったことがあり、そこではじめてストレスだったと気付いたことがありました。ストレスで胃を壊して内視鏡で診てもらったら出血していたこともありました。年齢とともに気付くことがあるといいますか、若いころはガムシャラに頑張りすぎて体調を崩すことがありましたが、でもそういう経験があるからこそこうした方が心身に良いと感じられるようになったのかなと思います。

 ただ、それでもやっぱり40代後半からホルモンや代謝が落ちてきたと感じます。天気が良くて気持ちの良い日なのに、なんでこんなに不安なんだろうと感じる時期がありました。そのころに教えていただいた漢方医に症状を話して、漢方薬を処方してもらいました。いただいた漢方薬を飲んだら、不安感がさっとなくなったんですよね。それに、眠れない時に処方していただいた漢方薬も飲んでみるとすっと寝られるようになりました。女性は季節や月の周期といった地球の動きにすごく敏感で、同調して生きている生き物ですよね。ですから、他の生き物や植物のエネルギーをもらって体を整えるというのはすごく理にかなっていると思っています。女性のちょっとした不調には、まず漢方がいい気がしています。

時間をガラスで表現して気が付いたこと

 南青山の「ギャラリー・アートアンリミテッド」で3月から約1カ月、展覧会『時の素描 灯りとうつわ 2022』を開催しました。「時の素描」シリーズは、時間を描くことがテーマです。なぜこんなにガラスが好きなのか、以前から考えていたのですが「時の素描」シリーズを作ってから結論が見つかりかけた気がしています。このシリーズは、ガラスの玉に色を巻いていき、それを潰して吹いて、何重もの層が入り込んでいます。こんな薄いガラスのなかにたくさんの立体が収まっています。今まではこのガラスのなかに世界を閉じ込めていると思っていたのですが、実はここから世界が始まっているということに気付きました。ガラスは硅砂から作ります。鉱物と熱の結晶は宇宙そのもので、このなかに宇宙があるんじゃないかと思っています。そう思ってからは迷いがなくなった感じですね。これを突き詰めていけばいいと思っています。

子どもがいる楽しみ

 育児はもうほとんど手離れですね。放っておいても子どもたちでご飯も作れますし。「ちょっと出張に行ってくるから」と言っても「はーい」って感じですし、家を開けて帰ってきても「え、いなかったの?」って(笑)。でも、わたしは全然寂しくはないです。子どもたちにも自分の世界ができてきていますし、ますますやりたいことができると思いますしね。この子はいったい大丈夫だろうかと途方に暮れたりもしましたけど、なんとかなるものだなっていうのが子育ての感想です。

 以前、とても感動したのは、子どもたちがお小遣いを持って「ママのペーパーウェイトを買いたい」と言ってきて購入してくれました。ちょっとオマケしてあげましたけど(笑)。後ろに日付を書いてあげて、3人とも今でも飾っています。ちょうだいじゃなくて、お金を払って買うというのがすごく嬉しかったです。子どもがいる楽しみは、カレンダーじゃないですが、あの時こうだったなとか何年生のころに何があったなといったことを思い出す指針になるんですよね。そばに別の人生を歩む別の人が居るっていうのはとても楽しいですね。

イイノナホ
北海道洞爺湖温泉町生まれ、東京四谷育ち。武蔵野美術大学彫刻科卒業後、吹きガラスを始める。東京ガラス工芸研究所日曜講座。ピルチャック・グラススクール(シアトル)で学んだ後、1997年に作家活動を始め、現在はアートピースの他、ペーパーウエイトやシャンデリアなどのプロダクトにも力を入れ、フランス、アメリカ、韓国を始め、国内外に活動の場を広げている。

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