撮影:高瀬博

2023.05.12

わたしと漢方

バランスよく「美味しく」食べることを心掛け季節の変わり目には旬なもので体を労る

丹下慶子 料理家

10年前に始めた料理教室「さくらキッチン」を主宰し、ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」ではチーズの講師を務める丹下慶子さん。忙しい合間に時間を見つけては飯能や高尾で、トレイルランニングをしたりマラソンのレースに出場しています。若い頃から食の大切さを伝えたいと考えていた丹下さんは、マスコミの仕事から食の仕事に転身し、今ではバランスよく「美味しく」食べることを心掛けているそうです。料理家として食の大切さを発信し続けている丹下さんに健康への向き合い方や日々の生活についてお話を伺いました。

体調を崩したことがきっかけで食の仕事に

20代はラジオ局で宣伝やPRの仕事をしていたのですが、体調を崩したことがきっかけで自分の食生活を見直すようになりました。不規則なマスコミの仕事は、間食して太りやすくなるという印象があったので、できるだけ食べないようにしていたのですが、それがもとで体調を崩しました。

もともと食べることに興味がありましたので、ゆくゆくは食の大切さを伝える仕事に就きたいと考えていましたが、体調を崩したことがきっかけで食の勉強を始めました。ちょうどその頃、たまたまパンの料理講座に申し込んだのですが、実際に自分でこねてみるととても楽しくて。粉だったものがパンになることにも感動しました。必要な栄養を、しかも太らずに摂取するにはどうしたらいいかと調理法なども勉強していくうちにどんどん楽しくなって、気がついたら転職して食の仕事に就いていました。

まず、フレンチ料理のシェフとしてとても有名な三國清三さんのもとでPRの仕事を始めました。仕事を通して料理の名前やワインのことを知るようになり、さらに料理の出し方や順番、シェフのこだわりといったことも勉強になりました。三國シェフからいろいろな影響を受けましたし、ワインやチーズ、パンの仕事をするようになって、三國シェフのもとで働いたことがいま活きていますね。

漢方における未病の考え方に共感

出産を経て、いよいよ自分で食の仕事を始めてみるのですが、最初はなかなかうまくいきませんでした。そこでもう一度しっかり食の勉強をやり直して、日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザーの資格とチーズプロフェッショナル協会認定のチーズプロフェッショナルの資格を取得しました。

それから、漢方養生指導士の資格も取りました。漢方における未病の考え方がとても好きです。体調を崩すことがたまにあって、それが決まって3月と6月でした。いつも元気なのに季節の変わり目に体調を崩すことが多く、気候の変化を受けやすいのかなと思っていたところ、薬膳や漢方の考え方に行き着いたわけですね。季節によって気をつけないといけないことがあるのだなと気付いたので、3月は肝を労る、6月は胃などの消化機能に気をつけるなどを意識して食材を選ぶようになりました。そうすると毎日をもっと快適に過ごせるのではないかと思います。それでも季節の変わり目に体調崩すこともあるので、五苓散や当帰芍薬散などの漢方薬も取り入れてみたいと思っています。

現在は、ワインスクールの「レコール・デュ・ヴァン」でチーズの講師を務めながら、料理教室の「さくらキッチン」を主宰して、パンとチーズ、そして野菜をテーマにした料理を教えています。なるべく旬の食材を取り入れるように心掛けていて、4月のレッスンでは桜を使ったり、5月は発酵調味料でカレー野菜スープを作ります。発酵調味料と言っても玉葱麹や塩麹は本当に万能で、コンソメや化学調味料を使わなくても美味しさを実感できますね。昨年末から友人と西早稲田で月に1回ワインバーも開いています。

料理の仕事は、いつも100%の準備をしないと後悔します。これだけ準備したから大丈夫だと思ってやると、達成感や充実感がすごく大きいです。ずっとこの仕事をやっていくだろうなと思います。料理の仕事はお客さまの反応がストレートにわかりますし、目の前のお客さまが喜んでくれたらすごく幸せです。そこにやり甲斐を感じますね。

朝ごはんを食べたいと思えるかどうかが健康のバロメーター

食事はいつも意識しています、特に朝ごはんです。夜は軽めに済ませて、あまり食べないようにしています。朝と昼、そして夜の食事をいかにバランスよく摂るかが大切ですし、バランスよく「美味しく」食べることを心掛けています。無理して食べる必要はありません。私にとって朝ごはんを食べたいと思えるかどうかが健康のバロメーターです。

朝はしっかり食べますが、昼もお腹が減るかどうかがポイントで、活動していれば昼はお腹が減るものです。自分の中でこれくらいが体調がいいというのがわかっているので、炭水化物を摂るなら17時までに食べておくようにします。そして、規則正しい生活を心掛け、夜は絶対に0時までに寝るようにしています。23時には寝て、朝は6時前後に起きて、7時間は睡眠を取るようにしています。

美味しく食べて美味しく飲むために

仕事とプライベートのバランスも大切にしています。パンもチーズも好きですが、集中して仕事や勉強をしすぎるとすごく疲れてしまいます。私は、そのバランスを保つために体を動かすことを趣味にしています。仕事の隙間時間にランニングをするか丸一日外に出るようにしています。初めはもちろん健康維持のためでした。もともと運動が好きでピラティスをやっていましたが、走ってみるのもいいよと言われて走り始めました。パンやワインの仕事もしているので、美味しく食べて美味しく飲むために、今ではランニングが生活の一部になっていますね。

最近ではトレイルランニングを始めましたし、春と秋の年2回は必ずフルマラソンの大会に出場しています。3月は「名古屋ウィメンズマラソン」に出場して、忙しくなる前の4月はトレイルランニングのレースに出ました。心のバランスを取るためにジョギングをする、心身のメンテナンスのためにトレーニングをする、少しでも疲れたなと思った時こそ散歩でもいいので動くようにしています。寝不足だったとしても一回、気持ちをリセットするために走るようにしています。泳ぐことも好きですが、たださすがにトライアスロンまではいきませんが(笑)。

丹下慶子/たんげけいこ

ラジオ局ディレクター、フランス料理店PR、大手料理教室運営業務を経て、パンと体にやさしい料理の教室「さくらキッチン」を主宰。また、ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」にて、チーズ講師を務める他、企業のチーズレシピ開発なども行う。
・NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
・日本ソムリエ協会認定ソムリエ、ワインエキスパート
・漢方養生指導士
HP:https://natuvegesakura.wixsite.com/sakura
インスタグラム:
Cooking @keiko.sakurakitchen
Wellness @keico.5024

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