STORIES "KAMPO with Me"

わたしと漢方

細尾多英子 「HOSOO」コミュニケーションディレクター

【前編】夫婦で旅行を楽しみながら、引き出しの中を豊かに増やしていくことを心がけています。疲れが溜まってきて体調がすぐれない時は、食事など自然のもので整えるようにしています。

撮影:石川奈都子  取材・文:郡 麻江  2020.12.16

京都に元禄年間(1688年)から続く西陣織の老舗〈細尾〉の12代目で代表取締役社長の細尾真孝さんの妻、細尾多英子さんは東京でPR職を務めた後、真孝さんとの結婚を機に京都に移住。西陣織の老舗の若女将として伝統文化に携わりつつ、コミュニケーションディレクター=広報担当として、企画、運営、PRなども担い、公私ともに多忙な日々を送っています。また昨年9月に、オリジナルのテキスタイルブランド「HOSOO」のコレクションを展開する初の旗艦店「HOSOO FLAGSHIP STORE」が本社ビル内に誕生し、商品企画などにも関わるようになり、ますます忙しさが増したといいます。伝統文化の新しい機軸の最前線で働く女性として、また妻として、そして一人の女性として、忙しくとも日々の暮らしを楽しみたいという細尾さんに、お話を伺いました。

時々、夫婦で旅行を楽しみ、普段はゆったりバスタイムでオンオフを切り替えています。

 昨年9月に、こちらのフラッグシップストアがオープンしましたが、その立ち上げから深く関わり、「HOSOO」というテキスタイルブランドを展開していくための広報活動の仕事をしています。まず、広報としてプレスの方々への対応、そして、お客様のアテンドなどが主な仕事ですが、すべての基本はコミュニケーションにあると思っています。おもてなしの気持ちを忘れずに、スムーズなコミュニケーションを心がけています。お休みは基本、土曜と日曜なのですが、ストアが営業していますので、お客様の御来店のご予定に合わせて出勤することも少なくありません。それでもやはり週に2日はできるだけ休みを取るようにしています。

 ウイークデーは、夫と一緒に仕事をすることが多いので、ウイークエンドに二人一緒にお休みが取れた時は、ゆっくりと過ごすことが多いですね。夫とは、普段、日中もよく顔を合わせますし、ずっと一緒にいるので、「どちらかが疲れたら、疲れすぎないうちに、お互いに早めにケアをするように気をつけようね」とよく話しています。リフレッシュ方法はやはり旅行でしょうか。忙しすぎる時期があると、その後に少しお休みを取って、二人でリフレッシュ旅行に出かけます。仕事を忘れて楽しむつもりなのですが、ホテルに着くと、ここのインテリアはどうとか、エクステリアはどんな素材かとか、お互いについつい仕事モードが入ってしまうんですよ(笑)。でも、それも大事なインプットかなと…。あまり考えすぎず、旅を楽しみながら、引き出しの中を豊かに増やしていこうと二人で話しています。

 健康維持のために日々心がけていることの一つにバスタイムがあります。お風呂に入ることが私の一番のリフレッシュタイムかもしれません。朝晩必ず、湯舟に浸かるのですが、この時間のおかげで、スムーズに気持ちの切り替えができるんです。ハーブ系の入浴剤を使い分けて、夜はリラックス系、朝はリフレッシュ系を選ぶなど、香りも楽しんでいます。朝は、起きてすぐに、まずお風呂です(笑)。お白湯を一杯飲んで、すぐお風呂に入って…。湯温は42度ぐらいで、しばらく浸かっていると、体温がグッと上がってくるのが分かります。前日までどんなに疲れていても、たいがいそれでシャキッとしますね。時間があるときは、その前に少し、ウォーキングをして、そこからお風呂に入ることもあります。とにかく、朝はお風呂の時間をちゃんと取りたいので、6時ぐらいに起きますね。お湯に浸かると交感神経が目覚めるんでしょうね、体温も上げるし、体も気持ちも活性化するように思います。

 夜は40度ぐらいでぬるめのお風呂にゆっくり浸かります。リラックス系のハーブの香りを楽しんだり、岩塩を入れたりして、音楽を聴きながら入ることもあります。肩まで浸からず、半身浴みたいな感じで20分ほど浸かります。朝も夜もシャワーだけ、ということは、ほぼありません。浸かる時間と洗う時間を合わせて40〜50分はバスルームにいるかもしれませんね、大好きな場所です(笑)。汗もよく出るので、体の代謝も良くなっているのでしょうか。足の疲れやむくみも取れますし、何よりもオンオフの切り替えが心地よくできるのがいいですね。昼間に嫌なことがあっても、お風呂タイムのおかげで気分がスッキリするんです。

 どなたでも同じですが、仕事はいいことばかりではありませんから、トラブルも当然あります。でも、いつまでもクヨクヨ、イライラしないで、お風呂でいったんリセットして、また明日考えようと…。それが私のメンタルの健康法かもしれません。家に帰ってからも、ああだこうだ、あれもしなきゃとかこれもしなくちゃとついつい考えがちになるのですが、そういう時は、ちょっと一回お風呂に入ろうと…。プライベートな時間まで、イライラを持ち越さないことが大事だと思います。ネット社会になって、夜でも仕事の連絡は来ますし、それを見てしまうと、仕事モードに戻ってしまうので、22時以降はスマホも一応自分から遠いところにおいています。12時頃には寝るようにしていますが、1日の最後の2時間は、スマホからもパソコンからも解放されたいと思います。

外食が続いたら、季節の野菜をたっぷり入れた薬膳鍋で、疲れた心身をリセット。

 私たち夫婦は、二人とも食べることが好きなのですが、京都は素敵なお店が多いですし、時々、夫婦で新しいお店に食事に行くのもとても楽しいです。でも、新しいお店に行くと、また、ついつい、壁がどうとか、家具や器がどうとか、チェックが入ってしまいますが…(笑)。でも、京都は、飲食に限らず、物販も含めて、切磋琢磨されているお店が多いので、日々、いろいろな新しいものに触れることができるのは、とても幸せですね。町歩きをするだけで勉強になるのも京都の魅力ですね。

 これからの忘年会シーズンなど、仕事関係やお客様との会食が続くと、胃腸が疲れてきますので、そういう時は、よく薬膳鍋をつくります。鶏ガラスープや、カツオのだしなど、その時々でベースを変えますが、季節の野菜やきのこ、根菜を使って、あとはクコやナツメなども加えて、野菜、肉、魚をバランスよく取れるお鍋にしています。夏場はスパイスを効かせて辛めにしたり、冬は、体を温める生姜をたっぷり加えたり。季節の食材ってやはり体が欲するんでしょうね。夫も疲れてきたら「そろそろ薬膳鍋にしようか」とよくリクエストをしてくるんですよ。

じつは夫婦ともに漢方好き。ちょっとした風邪や体調不良を漢方でケア

 ナツメや生姜などは漢方の生薬でもありますが、じつは私たち夫婦は、共に漢方好きなんです。漢方との出会いは10年ぐらい前になります。私は基本的に丈夫で、あまり風邪なども引かないのですが、疲れが溜まってきて体調がすぐれない時は、極力、食事など自然のもので整えることを心がけています。実家の母がそういう考えで、風邪をひきかけたら生姜をたっぷり食事に使うなどの工夫をしてくれていたので、自然に私もそういう考え方になったのだと思います。風邪をひいたなと思ったら、まず葛根湯を飲みます。あと、五苓散も手元に持っています。お酒が好きなのですが、翌日のむくみが気になるので、そういう時は五苓散を飲んでいます。頭痛や二日酔いの時も良いと聞きました。あとは、婦人科系で当帰芍薬散もよく飲みます。30代を過ぎると、なんとなく20代では感じなかった体の不調を感じることがあって…。東洋医学では「未病」というんですよね。どこも悪くなくてもそういう時期が続いてくると、漢方薬を飲む。そうやって体調のバランスを取っています。今はドラッグストアやネットでも漢方薬を購入できるので、便利になりましたね。

 漢方の好きなところは、体に負担をかけずに日々、体のケアとメンテナンスをしている感覚があって、それが健康の自信にも繋がっていると思います。便利なので普段はエキス剤を飲んでいますが、京都って結構、古い漢方薬局があって、時々、覗きにいくんです。そこでナツメなどを売っていて、それを買ってきて、フライパンで焼いておやつにしています。表面はカリッとして、中身がふっくらして、ちょっといいお菓子をいただいている気分になれます。甘くて本当に美味しいんですよ。

 ある漢方薬局の奥様が勧めてくれたのですが、その方が多分70才ぐらいなのですが、お肌がつるつるで本当にお若くて、綺麗なんです。その奥様が「こうやってちょっと温めたらおいしいのよ」ってお店のストーブでナツメを焼いてくれて…。ほんとうに美味しくて、たくさん買ってきて、焼いて食べるようになりました。消化機能もアップすると聞きましたが、お通じもいいですし、肌の調子もいいと思います。こんなふうに漢方にも使う食材を、日々、取り入れているせいか、忙しい割には疲れにくく、体調もいいですね。スタッフもたくさんいますし、まず元気でいなければ…!と思っていますが、自然の力ってすごいなあと改めて思います。(Part2に続く)

細尾多英子/ほそおたえこ
外資系企業のPR、マーケティング担当を経て、結婚を機に京都へ。海外の歴史あるブランドでの経験を生かし、夫の家業である西陣織「HOSOO」の企画や広報を担い、伝統文化を未来に繋げるべく、国内外に向けたコミュニケーションを行う。

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