撮影:川原崎宣喜

2018.11.27

わたしと漢方

ライフスタイルの変化を楽しみ、体をゆっくり整えること

柚木さとみ 料理家

雑誌やWEB、メーカーのレシピ開発、ドラマの料理制作など、食や食空間に関わる様々な仕事に携わる料理家の柚木さとみさん。友人と一緒にセルフリノベーションした築55年の平屋で開講している料理教室「さときっちん」は、毎回募集とともに満席になるほどの人気で、そのナチュラルな暮らしにも注目が集まっています。明るい笑顔が魅力的な柚木さんに、健康的な暮らしと食について、お話をうかがいました。

夢中で働いていていた日々から、ライフスタイルを変えて気づいた自分の変化

20代は、大学時代からアルバイトしていた吉祥寺のカフェに就職して、4店舗の統括店長を務めていました。その時は朝から晩まで、遅い時は0時近くまで働いていたんですが、毎日気を張っていたのか、特に大きく体調を崩すということもなくて、食事も出来合いのお惣菜など、ほぼ毎日外食。ゆっくり食べられる日でも、視察と称していろいろなお店を食べ歩いていました。

そうした生活を5年ほど過ごしましたが、一度生活を見直そうと28歳で仕事を辞めて、ゆるりとした生活にシフトしていきました。1年くらい経つ頃、それまで水仕事をしていても手荒れもせず、ハンドクリームもいらなかったのに、急に手がただれるように荒れてしまって。原因はわからないんですが、新しい生活になって自炊中心の生活をしたことなどから、体が自然にデトックスしているのかな? と漠然と感じました。病院に行っても対処法もなく、結局、半年くらい経ったら自然に治ったんです。体って不思議ですよね。新しい暮らしが自分に馴染みだしたころ、「もう大丈夫」って体に言われているような気がしました。自炊は体調のことを意識して始めたわけではありませんでしたが、それまでに食べたいろいろな料理の味付けや盛りつけを思い出しながら作ってみたら、美味しくできて楽しくて(笑)。からだの変化もあり、そこからフードコーディネーターの資格をとるなど、自然と料理を作る仕事について考えるようになりました。

年齢とともに、体調の悩みへの対応も変わってくる

ご縁に恵まれて、雑誌や企業のさまざまなレシピ開発やドラマの料理制作なども経験してきましたが、お仕事によって生活リズムはバラバラ。子どものころから気管支が弱かったんですが、30代からは風邪を引くとすぐ気管支炎になったり、咳だけが長引いてしまったりして。どんなお仕事の時も、声が出ないと困るし、ちょっと調子が悪いかなと思った時は早めに病院に行って、処方される抗生物質を飲んで治していました。

そうやってずっと対処していたんですけれど、これは根本的な改善が必要だなと、漢方薬を試してみようと思ったのが2~3年前のことです。漢方薬といえば「葛根湯」くらいしか知らなかったんですが、いまでは知識が徐々に増えてきています。気管支はいまも弱いほうですが、じっくり体を整えている最中だと思っています。

また、視力はずっと良いんですが、最近はスマホを見たりパソコンを使う時間が増えて、目が疲れているのを顕著に感じるようになりました。目のかすみとか乾きとか、ちょっとした不調がストレスだなと思い、それも先日相談してみたら、薬と一緒にお茶を紹介してくださいました。お茶で目をよくするという発想がなかったので、目にこんなアプローチもあるのかと驚きました。薬もお茶も毎回、「これはどんな味かな? 何を使っているのかな?」ということも気になりますし、体調について相談しながら、薬剤師さんにお話を聞くのはとても面白いです。漢方の味についても、これは甘くて飲みやすいとか、ちょっとクセがあるとか、いろいろと興味深いですね。

旬のものを食べたり、食材について知ること

日々レシピを考える時に、食材は何を使うかを考えますが、旬の食べ物というのはやはり体調を整えるうえで理にかなっていると感じます。これからの時期だと、レンコンやキノコ類、ホウレンソウなどが美味しくて、美味しいというだけでも体は喜びますが、例えばレンコンなら咳止めの効果、ほうれん草なら風邪の予防効果、といった具合に、旬の食材にはその季節に合った効能があります。ただシンプルに「美味しい」ということも大切にしつつ、食材の力を活かして料理するという薬膳料理などもとても興味があるので、これから勉強していきたいと思っています。

今住んでいる自宅も、料理教室「さときっちん」を開催しているスタジオも、自分らしく暮らしやすいように、キッチンを中心に考えて古家をリノベーションしました。スタジオの方は床や壁を貼るところから友人たちと手作業で作っているので愛着があるし、そういうことができる家に出会えたのもなにかしらのご縁を感じます。これまで、料理や食を楽しみ、心地よい家づくりや暮らしを楽しんできたように、自分の体とじっくり向き合いながら、健康なからだづくりも楽しんでいきたいなと思っています。

柚木さとみ/ゆぎさとみ

料理家。大学卒業後、吉祥寺のカフェで4店舗の統括店長を務めたのち、退職後カフェプランナー、フードコーディネーターの資格を取得。雑誌やweb、企業やメーカーのレシピ開発、ドラマの料理制作など、食や食空間に関わる様々な仕事に携わる。著書に「塩レモン・塩ゆずパーフェクトブック」(タツミムック)など。現在は、友人たちとセルフリノベーションした、築55年の平屋で料理教室「さときっちん」を開講しており、その暮らしにも注目が集まっている。

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