STORIES "KAMPO with Me"

わたしと漢方

安藤桃子 映画監督

「今の体調を受け入れる」
漢方は、自分の本音と対話するきっかけ。(後編)

撮影:アキタカオリ 2018.04.16

映画『0.5ミリ』の撮影をきっかけに高知県に移住し、結婚・出産を経た今、まさに「漢方ライフ」を楽しまれているという映画監督の安藤桃子さん。自分の気持ちに正直に暮らす生き方には、健康へのヒントが詰まっています。漢方との出合いから心境の変化、ご自身の生活にどのように取り入れているか、までを伺いました。前・後編の2回に分けてご紹介します。

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 私たちも皆、日々進化しながら生きていると思うんですが、自然を見ていると、春夏秋冬、時の流れの中で、枯れたり倒されたり、蘇って芽が生え花を咲かしたりとサイクルの中で常に変化していますよね。高知県に移住してから、無意識にも自然と向き合う機会が増えました。生死や陰陽、時の流れの中でバランスをとるということが、自然界では当たり前に繰り返されている。そんな風に大自然を見つめていると、あ!そもそも自分も自然の一部だったんだと改めて気付き、もしかしたら、不自然な生き方をしているのかもと感じる事があります。「都会はNG、自然が一番!みんな畑を耕せ!」とかそういうことではまったくなくて、文明と文化の融合というか、何事もバランスっていうのが大切なんだと思うんです。体も一緒で、ネガティブな反応を嫌いがちだけど、それも自分自身に変わりはない。だったら自分が一番の味方になってあげようって。不調を一度受け入れてこそ、心身のバランスが取れるのかもと感じています。

これはダメっていう考え方をやめました。

 高知県にいる時は、近所で採れたばかりの魚や野菜を食べられるので、それが嬉しくて、移住したばかりの頃は、東京に戻るたびに人工的な物に拒否反応がでてしまって。コンビニ弁当や、レストランで出てくる料理を見ただけでは、どこで採れた野菜で、何を食べて育った肉かはわからない。そこに疑問を持つ事は大切ですが、きっと私は不安にのまれてしまったんですね。生まれ育った街なのに、拒否反応が出るのは苦しかったです。けど、一周回って思ったのが、コンビニの米も、レストランの野菜や肉も、米は米、肉は肉。同じ命には変わりない。美味しくても不味くても、食材に罪はないぞ!ということ。そう思ったら、ありがたくって、何でも美味しく頂けるようになりました、笑。
 「これはダメ」という制限を自分に設けなければ、判断基準は「気持ちいい」か「気持ち悪い」しかなくなることに気付いたんです。一時、ダメが増え過ぎて、息苦しくなった自分がいました。感じている”こころ”の反応が大切なのかな?目の前に選択肢があるとき、まずは自分のこころに問うことが大切だなと思います。例えば、「今日何食べたい?」って聞かれた時に「なんでもいい」って答えてしまう時は、あれ、自分調子悪い?疲れてるかな?っていう日。元気はつらつ、感性が冴えている日は「これが食べたい!」って意思がはっきりありますし、「完食するぞー!」って食欲もモリモリです。

本来の自分を知ることが、健康につながる?

 父を見ていると、人それぞれ適した生き方があるんだなって思うんです。ワーーーっと、感情のままに言いたいことを言って、もう!勝手だな!とも思うんですが。笑。健康に気遣っているわけでもないのに、父は風邪もひかないし、体調も滅多に崩さない。健やかなんです。心が安定しているんだと思います。ストレスを抱え込まず、処理の仕方を本能で知っているのかも。今は事情や都合に影響されがちな世の中ですよね。周りを気にしすぎると自分を見失いがちですし、自分が「何をしたい」とか「どう感じている」かが見えにくくなる。だからこそ、自分の内なる声、本心を意識するかしないかで、体調も変化するんじゃないかな。
 漢方って数が多くて複雑に見えますよね。風邪をひいたら葛根湯を飲めば絶対治るという訳でもないし。人それぞれに、気持ちも症状も違えば、100人いたら漢方の組み合わせも100通り。「今の症状はこうだからこれ」っていうふうに、その時々で対応が変わってくる。漢方って、本来私たちが持っているチカラを自然の力を借りて、内側から発揮させてくれる、心強い友のような存在です。漢方がすべて自然由来って考えると、「これは一体どんな植物からできているんだろう」とか、どんどん興味が湧いてきます。それを追求していくと、自分と自然との関係がわかって、深まっていくし、心身ともに健やかでいるために、これから先どう生活していけばいいのかもみえてくるかも。

(おわり)

安藤桃子/あんどうももこ
1982年東京都出身。映画監督。2010年に監督・脚本を手掛けた『カケラ』で映画監督デビュー。自身の介護経験に着想を得て書き下ろした長編小説『0.5ミリ』(幻冬舎)を、2014年に妹の安藤サクラ主演で映画化。2017年に高知市内に映画館「ウィークエンド キネマ M」をオープン。プライベートでは2014年に結婚、高知県に移住。一児の母でもある。

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