STORIES "KAMPO with Me"

わたしと漢方

大宮エリー 作家

連載「大宮エリーの 私、ツムラーになる!!」第6話

撮影:弘瀬 秀樹 2018.2.18

第6話 「わたし、ツムラー失格」

このたび本を出した。「なんでコレ買ったぁ?!」という反省本。日経MJで連載していたのが本になったのだ。
その宣伝でラジオの生放送に出たら、MCの方にこう言われた。
「この本の中で、いくつか、わかる!って思ったのがあったんですよー」
そしてその方が本をパラパラしながら、
「これこれ、漢方薬たくさん!」
「そ、それですか!?」
驚いた。
「やっぱ、名前かっこいいよね。わかるよー。私も飲んでるんですよ。人に、これがいいって
 すすめれれて」
どういうシーンで飲んでいるのかと聞いたら
「二日酔い」
と言われた。なるほど。
ツムラでいえば、五苓散である。
ツムラボックスがあるんです。いろいろ集めてるんです、と言うと
「ツムラってさ、入浴剤のイメージがあるけど、漢方ものすごい量あるんだよね」
と言われた。
し、知らなかった。入浴剤と言えばツムラなの?
聞いてみた。そしたら、そのとおりだった。
創業者の津村さんが、津村順天堂(現ツムラ)をつくり、日本初の入浴剤「浴剤中将湯」を作ったそうな。
婦人薬の中将湯から生まれたこの入浴剤を使用した銭湯は、「中将湯温泉」として親しまれたらしい。それが、なんと明治30年。
すんごい。薬風呂の元祖ではないか!入浴剤の親!
周りの方がツムラを知っている。
ちなみに、ツムラさんに行って、いろいろ質問した時に
「これ、プレゼント」ともらったものがある。私が、ちょうど台湾に行ったときにもらったのが、薬草パックで、お鍋でぐつぐつ
煮出してそれを風呂にいれるととてもいいお湯になり、温まりあらゆる体調が整うって言われた、という話をしたからだ。
「はい、これ、煮出さなくてもいいやつ」
そのあとそれが、「くすり湯」っていう、抹茶というか、もっと濁った、薬草色のパッケージのボトル。
「こ、こんなのあるんすか!」
かなり玄人好みのパッケージである。
「か、かわいくない、地味だし」
思わず呟く。
「温まるだけじゃなくて、リウマチとか腰痛肩こり、あと、しっしんとかにきびとか」
そう、私はひどい冷え症で、そんな話を言ったらこれを渡された。
「続けることがだいじです」
そうんだよなぁ。
100パーセント生薬エキス、って書いてある。これで、「煮出すのがめんどくさくて、さぼってて」
が通用しなくなった。
話は戻るけれど、いま、その「なんでコレ買ったぁ?!」ていう本の出版記念で、
6日間だけ個展をPARCOのギャラリーXでしている。そこに出てきた私の買ってしまった逸品、大量に集めてしまった逸品を展示している。
それらは私にとっては宝物もでもうちのマネージャー陣にとっては
「あのう、この展示終わったら処分してもらえますか」というガラクタなのだ。
まあ、その中で
「草間彌生トランプと、漢方薬は、いいですけど」
と言われた。そう、漢方薬たちも展示してあるのだ。
どうです?ギャラリーに漢方薬。
シュールでしょ?でも、飾ってみると案外、いいんですよねぇ。
初日トークショーで、ゲストのしりあがり寿さんに展示を見ていただいてトーク。
「あ、漢方ね。わかる。名前、つよそうだもんね、あと、番号がラベルなのがいいよね。たくさん番号あるんだよね!」
「そうなんです!」
食いついてくれた!共感してくれた!
嬉しくなって、すこし自慢げに言った。
「風邪だけで、初期、中期、後期とあるし、他にも二日酔いや、腰痛や、いろんな症状に効くものがあるから
すごい集めなきゃいけなくて、、」
というと、しりあがりさんが
「葛根湯が1番なんだよね」
「え?」「番号の1が、葛根湯」「え、、そうなんですか?」
「そうだよ、たしか」
「へー」

みんなのほうが、ツムラーだった。。

大宮エリー/おおみやえりー
1975年大阪府出身。東京大学薬学部卒業。作家、演出家、画家など多くの肩書きを持ち、2016年に美術館で初の個展『シンシアリー・ユアーズ』(十和田市現代美術館)、2019年1月に個展『 Beautiful Days ~ 美しき日々 』(代官山ヒルサイドテラス)を開催。現在、『道後オンセナート2018』(2019年2月28日まで)に参加している。 著書には『生きるコント』『思いを伝えるということ』(文春文庫)、新エッセイ集『大宮エリーの なんでコレ買ったぁ?!』(日本経済新聞出版社)他多数。新作品集『虹のくじら』( 美術出版社)が2月20日発売予定。

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