STORIES "KAMPO with Me"
わたしと漢方
連載「大宮エリーの 私、ツムラーになる!!」第5話
第5話 「おかんと漢方」

おかんが最近、膝を悪くして病院に行った。といっても、膝はだいぶ前から悪いはず。たまに、びっこをひいているのを見たから。
「びっこひいてるやん」というと、「いや、これな、運動したらなおるねん!」といって、病院にいかなかった。
確かにしばらくすると治っていて、スキップしたり、小走りもできたりしている。血行なんだろうから。
でもずっと私は病院に行って欲しかった。
でもおかんは、「いかへん!」「だいじょぶや!」
親ってどうして心配する子供の心知らずなのであろうか。
親の心子知らず、が、逆転している。
おかしいな、と思ってから、数年が経って、おかんがいきなり「病院にいこかな」と言った。
たぶん、相当悪いんだなと思った。我慢できなくなったのだ。
結果は、膝のちょうつがいのようになっているところが、削れているとのことだった。
「もうな、右は、ほとんど、軟骨がな、ないねんて」「ええええっ」
哀しくなった。もっと早くいっていれば、そこまで削れなかったかもしれないのに。
「年取るっちゅうのはそゆことや」「病院いかんでも、いっても、削れるもんは削れる」
そうだろうか。
おかんは、夜、背中が痛くて寝れなくなることがあるそうな。そういうとき、
その辺を散歩して回ると治るのだろう。「な、自分で治せるねん」
それは、お医者さんに言わせると坐骨神経痛で、
筋肉が弱ってきているから、体重を支えられず、坐骨の骨と骨の間が、くっついてしまい、
神経に当たって痛いのだそうな。
「で、どうするん?」
「なんかな、枕を背中のこの部分に挟んで寝たら痛くないんやて」
「そうなん?」
「うん、やってみたら、痛くなくて寝れた」
よかった。でも根本解決にはならない。
「膝に負担がかからんように、10分だけ毎日、歩くっていうのがいいみたい」
そう、おかんは、歩く時、根詰めて1時間以上も歩く。これが
かえって炎症を起こすらしい。
そのくせに、毎日は歩かない。
「めんどくさいんやもん」
私は結構、おかんは運動していると思っていた。
「池袋から歩いた!」とか、「あのあとな、家まで歩いてん」とか
ええええっていうことを言うので、
すごい運動していると思っていた。でも、偏っていたのだ。
何事も偏りはダメ。10分でいいから、むしろ、10分以上はいけない、だとか
毎日やるのが大事だとか、医者に言われて、あらためて
そりゃそうだ、ということなのだ。
「お薬とかもらったん?」
そしたら、「これ、もろた」
と、芍薬甘草湯を見せられた。
「腰痛にいいねんて」
相当痛むといっていたので、相当強い薬なんかを渡されたんじゃないかと
ヒヤヒヤしていたが、私の馴染みの漢方だった。
そのときふと思った。
もともと私が、漢方が好きになったきっかけはおかんの病だったのだ。
私が大学生の頃、母に子宮筋腫ができ、それをお医者さんから、切除しましょうと言われ
おかんは悩んでいた。
「切りたないなあ、、、」
私は切らないと、もっと最悪なことになると思って
医者の言う通りにしてよ、と言っていた。が、おかんは、
「でもなぁ、なんか切らんほうがいい気がするねんなぁ」
そして、おかんはお医者さんに、「切らない方法ないですか」とお願いしたそうな。
そのときおかんが渡されたのが
桂枝茯苓丸だった。
「え?これで治るの?」と正直不安だったが、子宮筋腫による諸症状の改善にいいらしい。
おかんのパンパンにはれた子宮は、年齢と共に閉経へと、スムーズに誘導されて
小さくなりそして、消滅したのであった!
それ以来、私にとって漢方ってなんか、観音様のような存在なのであった!